南アフリカ人デザイナー、ケイティー・トンプソンは、不要になった身の回りのモノに新しい命を吹き込み(「re-purpose:新しい意味付け」と彼女は呼ぶ)、洗練されたインテリア家具や雑貨へと作り上げる。彼女の最重要かつ最新の作品群が作り上げるのは、メルセデス・ベンツSLのパーツを用いた、完璧な書斎だ。

捨てられたスーツケース、壊れた秤、琺瑯質の薄片がはがれかかり、一部がすでに欠けた琺瑯の皿。これらは、普通の人から見れば、価値のないモノ、日常生活からこぼれたガラクタ、さらにはフリーマーケットやヤードセールでさえも貰い手がいないような代物かもしれないが、ケープタウンのケイティー・トンプソンにとってはそうではない。使い古された日用品や、世の中に忘れられたモノ、壊れたり不完全な状態で世界を放浪してきた雑貨に対して、彼女の心は強く惹かれるのだ。この若きデザイナーは、抽象的な視点とアプローチで、これらの見捨てられた残り物に、新しい存在価値を見つけ、新しい命を吹き込むことに喜びを感じている。手先の器用な彼女にかかれば、何の変哲もないバケツの蓋がタイムレスなデザイン壁時計に変身し、蓋の閉まらないスーツケースが魅力的なインテリア家具になり、さらには、1950年代の掃除機がエレガントなフロアランプへ生まれ変わるのだ。

ケープタウン南部、100㎡のアトリエ兼ショップ『Recreate』にディスプレーされているこれらの宝物は、街の旧工業地帯・ウッドストックに誕生した、アート活動の震源地に“新しい家”をみつけた。ここは、使用していない倉庫やビール工場などのスペースを革新的なアーティストやデザインスタジオに提供し、現在ケープタウンで注目されている地区で、街には刺激的な空気が溢れている。これには、ケープタウンが国際的なデザインのイベント「ワールド・デザイン・キャピタル2014」の開催地に選ばれたことが大きいだろう。

この空気感と背景の中でトンプソンが愛情を込めて仕上げたショールームは、ノスタルジーと革新、がらくたとデザイン、クリエイティビティとアップサイクリング(使用済みのものから、付加価値の高いものを生み出す行為)の間に折り合いをつけていくイベントの、主催者的存在だと言えよう。ちなみに “アップサイクリング(upcycling)”は、彼女が会社を創設してから出会った言葉だが、偶然にもこのデザイナーがそのキャリアをスタートさせた当初から本能的に追求してきた原理だ。アップサイクリングとはつまり、人々に見捨てられた素材を、新しくそして、さらに高いクオリティを持つ商品へと変身させるプロセスを意味している。

インテリアデザインを学び、Cape Town’s Jo Carlinのデザイナーたちとコラボレーションをした後、トンプソンは起業家への道を探る第一歩を踏み出した。こうして2009年、彼女は自分の会社を設立した。でも始まりは、椅子からとった、たった4本の木材だった。27歳のデザイナーは、この素材に透明なアクリル樹脂を組み合わせ、1脚の繊細な椅子を作り上げた。この大胆でインパクトある成果を残したお陰で、彼女はすぐさま、ヨハネスブルクの影響力のある展示会Decorexへの招待状を勝ち取ることができた。こうしてトンプソンは、大胆なビジネススキームの基盤を築いていったのだ。

トンプソンは初めの頃、おんぼろのピックアップトラックを走らせては、自分の宝物を探し求めて、リサイクル施設やガレージセールを渡り歩いていたが、今では、個人的に思い入れのあるアイテムを再生してもらいたいと、所有者本人が直接コンタクトを取ってくるようになった。そんな背景の中、作品の多くは彼女自身の心が通う大切な一点へと作り上げられる一方で、日用品として再度、世に送り出すという、彼女の最初の、そして最大の目標は変わることなく保たれている。

そんな彼女が現在取り組んだ最大のチャレンジは、メルセデス・ベンツとのコラボレーションだ。スペシャルプロジェクトのため、この実用本位のアーティストは、沢山のメルセデス・ベンツSLのコンポーネントから7つのものを選び、オフィス向けの什器や家具、そして装飾品を再構築した。スケッチやデザイン画など、ろくに描かずに頭のなかで細部までデザインを練り上げることができる才能を持つトンプソンは、この一風変わった仕事で大成功を収めている。地元の美術工芸職人の協力の下、彼女は自動車のダッシュボードを新しい様々な実用機能に溢れたユニークなデスクへと変身させた。スピードメーターはマグネットボードになり、エアベントは名刺入れに、イグニションキーの差込口は、USBポートとなって、火花を飛ばす代わりに情報を提供している。運転座席が、座り心地抜群のオフィスチェアとして生まれ変わる一方で、オーバル型のスピードメーターは、複数の都市の時刻が分かる、ワールドクロックの役割を与えられた。さらに、仕事中も、そして仕事場を離れた後も、自在に疾走する気分を強調するため、トンプソンはリアミラーをデスクランプへと変身させ、締めくくりとして、アクセルペダルとブレーキペダルをペンホルダーへと仕立て上げた。

トンプソンは、2014年までに、つまり、彼女の母国が「世界のデザインの中心に」になる年までに、幅広い様々なスタイルの作品を披露して行く計画を持っている。しかし、もっと早く、彼女の“アップサイクリング”な作品を見たいというあなたには、この9月に開催される「クリエイティブウィーク・ケープタウン」(2012年9月15日〜23日)で、作品をご覧頂きたい。

上記掲載中の映像で、メルセデス・ベンツSLとのコラボレーション作品における、トンプソンの想像力溢れる素晴らしい創作過程をチェックすることができます。

Further information:

ケイティー・トンプソン公式サイト/オンラインショップ『Recreate』: www.recreate.za.net
ワールド・デザイン・キャピタル2014(開催地:ケープタウン): www.capetown2014.co.za
クリエイティブウィーク・ケープタウン www.creativeweekct.co.za